
『冷たい水』レイトショー

『冷たい水』は、私自身が主人公たちと同年代だった70年代という時代の、ある意味で自伝的な映画でした。
――オリヴィエ・アサイヤス
\\\ introduction \\\
1994 年の作品『冷たい水』の舞台は1972 年の冬。監督の分身ともいえる10 代後半の少年と少女。鬱屈と焦燥を抱えながらロックとともに疾走する、儚くも力強い彼らの姿が、全編16 ミリの手持ちキャメラで見事に捉えられている。
マリワナを吸い、ビートニク詩人を愛する高校生ジルは、あるとき同級生のクリスティーヌと一緒にレコードを盗もうとする。だがクリスティーヌだけが警察に捕まり、彼女はそれを機に精神病院に入れられてしまう。
一方、成績も素行も悪く、父と激しい口論を繰り広げ、そして高校を追い出されるジル。行き場のない彼はある夜、パリ郊外の大自然のなか、寂れたシャトーで行われるパーティに足を運ぶ。
若者たちがロックとマリワナを手に、火を焚き、ガラスを割り、すべてのしがらみから解放されて踊り、寒さのなか身体を寄せ合う。そこには精神病院から抜け出して来たクリスティーヌもいる。
ジャニス・ジョプリンの「Me & Bobby McGee」から始まり、CCRが強める高揚感。ボブ・ディランによる陶酔。恋人たちはレナード・コーエンに寄り添われ、ニコが、パーティの終わりの荒涼感を突きつける――
\\\ 『冷たい水』によせて \\\
初めて『冷たい水』を見たのは10年以上も前のことだ。何だか弱っちいロック映画だなあと、そのときは思った。もちろんそれが私の勘違いであったことはその後たっぷりと身に染みることになるのだが、一見弱々しくも映るこの危うさと儚さのギリギリの場所で、オリヴィエ・アサイヤスの映画は生きるための果敢な闘争を、果てることなく繰り広げている。ボロボロになった身体から、悦びと悲しみを振り絞り幽かな歌声に乗せるジャニス・ジョプリンの姿が重なる。繰り返し聴かれたレコードの溝が次第に擦り切れていく、そのときの小さなノイズがはっきりと、オリヴィエ作品には写し取られている。『夏時間の庭』『クリーン』『レディ・アサシン』『デーモンラヴァー』『感傷的な運命』『冷たい水』。そして再び『夏時間』……。繰り返し繰り返し、身を削りながらそれらを聴き続け、生きていきたい。生きていくために絶対必要な映画です。『冷たい水』は、映画館でしか見られません。
樋口泰人(boid )
\\\ 収録曲 \\\
Janis Joplin "Me & Bobby McGee"
Creedence Clearwater Revival "Up around the bend"
Nico "Janitor of lunacy"
Roxy Music "Virginia plain"
Leonard Cohen "Avalanche"
Bob Dylan "Knockin' on heaven's door"
Alice Cooper "School's out"
Uriah Heep "Easy livin'"
Donovan "Cosmic wheels"
\\\ オリヴィエ・アサイヤス Olivier Assayas \\\
最新作『夏時間の庭』が大ヒットを記録したオリヴィエ・アサイヤス。60~70 年代の激動の時代で映画、音楽、アート、そして思想などを吸収しつつ青春を過ごした彼は、画家を目指した後に映画を撮り始めた。するとすぐさま、当時行き詰まりを見せていたフランス映画界の新たな寵児として大きな注目を浴び、コンスタントに作品を発表してゆく。マギー・チャンにカンヌ映画祭主演女優賞をもたらした『クリーン』を始め、フランス映画の伝統を手放さず、かつアジアからアメリカまで様々なカルチャーに対する同時代的な感覚を備えた彼の映画。また『DEMONLOVER デーモンラヴァー』ではアメリカのカルト的バンド、ソニック・ユースに全編音楽を依頼したように、音楽、とりわけロックが、その映画を徴付ける大きな要素ともなっている。
『冷たい水』L'Eau froide
1994 年/92 分
監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス
撮影:ドニ・ルノワール
出演:ヴィルジニー・ルドワイヤン、シプリアン・フーケ、ラズロ・サボ、ジャッキー・ベロワイエほか
『冷たい水』2週間限定レイトショー
■連日21:10スタート
■当日一般1300円/学生・シニア・会員1000円
シアターイメージフォーラム