
2004年 boid日記特別編 青山真治新作撮影日記 VOL.6
Text by 樋口泰人
青山真治新作「エリ・エリ・レマ サバクタニ」撮影日記 VOL.6 in 吉祥寺・Star Pine's Cafe
11月17日(水)
朝7時前には吉祥寺駅中央口に、との指示。
いつもはちょうど寝付く時間なのにとは思うものの、確かにこれが撮影である。
釧路から帰り、しばらくサボっていたために、すっかり東京のダラダラ暮らしに体が慣れ切っている。
撮影は前日の朝から鎌倉で始まり、そのまま吉祥寺に入り、昨夜からスター・パインズ・カフェ。
もちろん、ずっと徹夜で撮影は続いている。
こちらも寝ていないが、撮影隊は肉体労働な上に寝ていない。
タフ、というか、たぶん何かがそうさせるのだろう。
私が見るのは、中原・浅野バンドのライヴ・シーンの撮影。
吉祥寺駅の改札を出ると、観客として出演するエキストラの一団が。
助監督の野本君に挨拶して、一足先に、舞台となるスター・パインズ・カフェへ。
中に入ると、すでにリハーサルが始まっている。
撮影のリハではなく、バンドのリハ。
すでにいきなりの轟音。
うーん、朝の7時からこの音を聴くとは!
いきなり目が覚めるが、そのリハをじっと見ている後姿は斉藤陽一郎君である。
今回は、声のみの出演と言いながら、じっとしていられなかったらしい。
釧路に行きたかったと言うその発言は、すでに俳優のものではない。
もう、何かやりたくてたまらないという気合十分。
当然、ライヴ・シーンでも大暴れする(監督に頼まれた演技だと本人は言っていた)ことになる。
阿部君は、ちょっと会わぬ間に太っていた。
完全に現場と一体化している。
長嶌は、ますますやつれていた。
現場に深く関わりながらますます現場から離れて行く。
この二人のねじれた両極端のベクトルの振れ幅の中に、今回の映画はある。
うっかりすると暴走してただのめちゃくちゃになるフィードバック・ノイズを微妙にコントロールしながら演奏するニール・ヤングのように、青山がなれるかどうかが、この映画のポイントになるだろう。
そして、あえて、コントロール不能な方向へと暴走していく機会=機械を、この映画はあちこちに設定している。
たとえば、先日の20台のDVカメラとか、この日の中原・浅野バンドのライヴとか。
ライヴをとらえるカメラも、会場のさまざまな箇所に設置される。
フィルムだけではなく、当然、何台かのDVカメラが。
そしてふと見ると、嫌味な格好をした杉山彦々が。
しかも、結構にあっているから笑ってしまうのだが、どうやら浅野君のマネージャー役で出演しているとの事。
本人は恥ずかしがっていたが、でも本当にこういう人っている、と思えるような姿になっているのだ。
観客役のエキストラが入り、どんな撮影になるか見てやろうと思っていたら、私まで、その観客の中に入れられてしまう。
おかげで、それ以降は若者たちに挟まれて突っ立ったまま最後まで。
腰に悪い。
2度ほどのテストの後、バンドの演奏が始まると、さすがに本番はまるでテンションが違う。
ノイズ・バンドというより、限りなくハードコア・バンドに近い音になっていたから、最前列の斉藤陽一郎君は、暴れ甲斐もあっただろう。
エキストラが入った段階では、客席の後ろからと、ステージの後ろからの2回の撮影が行われ、それぞれ数台(たぶん)のカメラが回っていたから、それらが再構成された際には、おそらくその場のものとは何かがまったく違ったものとして、たち現れてくるはずだ。

文豪音楽家のリハーサル
結局、ジーとかガーというノイズが出るだけなのだが、それでも機械は調整されねばならない

バンドのリハーサル
それをじっと見つめる革ジャンに帽子の怪しい男(本文参照)

逞しくなった文豪
轟音にも負けず、カメラを構え続ける

絶唱する文豪音楽家
今回は「歌詞を聞かせたいのだ」と本番前に叫んではいたが・・・

下々の動向を見下ろすマネージャー彦々
常に、その場にそぐわぬもとしてあり続ける稀有な姿

ディレイする文豪音楽家
どれが本物か分からない

轟音効果
何を写したかったのか分からぬものが撮れてしまう