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2001年 boid日記 4月

Text by 樋口泰人

4月17日(火)

ベルカンプやフォン・トリアーと並ぶ(笑)飛行機嫌いである私は、さらに大の出不精でもあり、旅行前1週間ほどはもう、全然どうしようもない。
あたふたするばかりで、何もできない。
昔のように、安定剤まで用意するほどでもなくなっただけでも立派なものだと、思ってはみるものの、やはりダメなものはダメ。
まったく落ち着かず、すべてが上の空。
こんなことでいいのだろうか。
すでに出発前日深夜を過ぎているが、まだ、準備が……、仕事が……。

昨日は、5月半ばからの吉城寺バウスシアターにおける『降霊』ロードショウ期間中のレイト枠での黒沢清セレクションによる日本の恐怖映画連続上映に向けてのインタビューを、半日以上かけて、篠崎にやってもらった。
相手が篠崎だということも会って、黒沢さんも、いつものインタビューよりリラックス気味。
話も、雑談に近い感じにもなるが、それはそれで、また、別のインタビューとして成立する。
ただ、このテープおこしとまとめのことを考えると、頭がくらくらする。
どちらにしても、斎藤敦子さんから借りたモバイル機を持っていくので何とかなるだろう。
このインタビューは、期間中の来場者のみに、おそらく分冊の形態で、配られることになる。
レイトショーの全プログラムと『降霊』 に来場すると、すべてのインタビューが読めるようにしようと思っているのだが、果たしてそこまですっきり分けられるかどうかは自信がない。
来場してのお楽しみというところ。
boid.net での通販も考えている。
まあこれは、すべてのスケジュールが終わってから。
とにかく目の前のもろもろを終えなければ……。

明日からは、たぶん、旅日記を毎日更新することができると思う。

4月7日(土)

今日は、明治学院大学で新入生相手に青山が講演をするというので、それをビデオ収録してboid.net のおまけにしようという心積もりでいたのだが、急遽青山からNG。
さすがに、映画好きでもなんでもない、ただの新入生相手に何を喋っていいのかもわからず、きっと動揺しまくるから今回は勘弁とのこと。
時間ができたので、急ぎの仕事を片付けようと早起き仕事体制をとったのだが、パソコンが動かない。
いや、動くことは動くのだが、とんでもなく遅くなってしまったのだ。
パソコンでの画像処理のやり方を、新しいソフトを使って試すという、パソコン自体にも無理がかかるものだったので、どうにもならない。
仕事は全然進まず、テレビから流れるヤクルト中日戦は、昨日と同じ、ジリジリとした試合。
ここ3年ほど、毎度同じパターンで、中日にやられている。
今日の場合は単に中日先発の野口の調子があまりによかったのでもう、どうしようもないのだが、昨日など、もしかすると試合前後に何か恫喝でも受けているのではないかと思われるような、萎縮の仕方である。
福留の顔すれすれに速球を投げられるようなピッチャーは、ヤクルトにはいないのだろうか。
審判団も、昨年、星野監督に試合中に恫喝を受けてしまったわけだから、こういった微妙な試合をしていては中日には絶対に勝てない。
そこへ行くと、浦和レッズの応援はすごい。
横浜のホームゲームとは思えない、地鳴りのような声援が、浦和を勝たせてしまった。
その応援を、「もっともっと」と挑発するトゥットの熱いハートがヤクルトにほしい。
トゥットのハートをサポートできる体制が、果たして浦和にあるかどうかが、浦和の今後のカギではないか。
まだまだ空回りしている気がする。
福田があと5歳ほど若かったら……。
アントラーズ-ジュビロ戦を国立競技場まで子供と見に行った妻も、アントラーズのあまりにふがいない戦いぶりに、テレビの前でトゥット・コールをしていた。
ジャイアンツが負けると本気で怒る子供は、サッカーはどこが勝っても負けてもいいみたいで、単に、ワーワー応援するのが好きなようだ。
食事後、子供が静かなので様子を見ると、ミニチュアの車を裏返しにして両手で持ち、両方の親指をしきりに動かしている。
黙ったまま、親指だけが小刻みに、その裏返しの車の両タイヤのあたりで動いているのだ。
一体何をしているのかとたずねると、「ゲームボーイ」という答えが返ってくる。
この答えには参った。
2年程前から、ゲームボーイを買ってくれと、何度も言われていたのである。
そういえば、昨年来日したスラップ・ハッピーのピーター・ブレグヴァドさんも、子供のためにゲームボーイのソフトを探していたのだった。
しかし妻は、そんな私の動揺など意に介さず、「ダメ」と一言。
我が子よ、強く生きるのだ!

4月4日(水)

仕事の関係で、埼玉の「さいたま新都心」、スーパーアリーナの中にできた「ジョン・レノン・ミュージアム」へ。
京浜東北線「さいたま新都心」駅は大雑把に言ってしまえば幕張あたりとよく似た雰囲気。
まだ工事中の建物も多く、ビュービューとビル風が吹く、お寒い人口広場を抜けて。
入場料1500円なり。
これは高いのか安いのかわからないが、仕事でなければ絶対に払わない。
というのも、私が、美術館、博物館の類が全然ダメだからだ。
じっとしていて、勝手に目の前が動いてくれないと、どうにもこうにも。
ミュージアム内は、平日にもかかわらず、ぼつぼつと入場者がいる。
これも、多いのか少ないのかわからない。
ただ、女性案内者の数が多いのは、気になる。
彼女たちの人件費を払っていては、到底やっていけないだろう。
まあ、バックに大成建設がついているらしいので、それで何とかなっているのだろうか。
ということは、このスーパーアリーナも大成建設なのか、などとつい余計なことを考えさせられてしまう。
とはいえ、いきなり試写室のようなところに入れられて、7分間のジョン・レノン物語が始まるあたり、私のようなぐうたらへのサーヴィスなのかもしれないが、ならばずっとここで見ていたいと、ぐうたらは思うのであった。
しかしそんなぐうたらな思いもかなわず、あっさりと物語りは終わり、展示会場へと追い出される。
場内は9つのブロックに別れていて、それらが、ほぼ年代順に並べられている。
なぜか、逆戻り不可。
管理・警備上の問題なのか。
11歳のジョン君がノートに作った雑誌や、初めて買ったという今や傷だらけのギターなど、泣かせるアイテムも所々にあるが、時代を追いながらのジョン・レノン物語が強い導線となって、会場を引っ張っている。
発売したシングルの全ジャケットを並べるとか、そのようなわかりやすい展示はない。
コレクションの展示というより、ジョン・レノンがいかに生きたかを伝えようとする場所として、機能させようとしているのだろう。
だから、展示物としてはオノ・ヨーコの60年代の作品が何枚かの写真で展示されていて、それがこのミュージアムの中心となっているように思えた。
ヨーコ以降のジョン・レノンは、もしかすると自分をヨーコのパトロンとして位置付けていたのではないか?
あるいは、ヨーコの作品の素材として。
そんな気にさえなった。
安田財閥に生まれたヨーコさんは、有り余る財力と強運をいかに使うか、その使い方を知る人なのだと、今更ながら感心させられた。

帰り道、新宿HMVで、カンパニー・フロウ、ジグマスタズ、マウス・オン・マーズの新作。
カンパニー・フロウはライヴを見た安井君の話だと、単にノリノリで、客をあおりまくるパフォーマンスをしているようなのだが、スタジオ録音のものはそんなライヴを思わせもしない、相変わらずのクールな壊れ方。

しかしジャイアンツにもピッチャーはいないのか。
高橋以降のリリーフ全滅。
運動能力のある子供たちが、みんなサッカーに行っているのだろう。
高校野球の指導者たちが考えを改めない限り、プロ野球の将来は暗い。
ヤクルト土橋は、眼鏡を止めてしまったのが微妙に影響しているように思う。
バッティングだけでなく、守備のほうも、私が見ているときだけでも、もう何度もポロポロやっている。
ヤクルトにはコーチもいないのだ、きっと。
一言、眼鏡に戻せと言えばいいのに。

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4月2日(月)

近所の洋食屋アップレーテでランチのシチューを食し(アップレーテはランチにはもってこいの欧風家庭料理のレストランである。美味)、ふらふら歩いていると、後方から老人の乗った自転車が、これまたよろよろと私を追い越していく。
寒くはないが暖かくもない。
のんきな住宅街を抜ける、ちょうど車1台通ればいっぱいの、裏道である。
だからみんな、適当にふらふら歩く。
子供はボール遊びをする。
しかし青梅街道、五日市街道、環七に囲まれたこのあたりはドライバーにとって格好の抜け道となっているらしく、それなりに車どおりも多い。
子供にはいつも気をつけろと言っているのだが、いきなり目の前で老人の自転車が、角から出てきたタクシーにがつんとぶつかったのには驚いた。
タクシーはまるで、別の空間から飛び出してきたかのように、いきなり現れたのである。
ぶつかったちょうどその位置でタクシーもストップしていたから、それほどスピードも出ていなかったのかもしれない。
老人の自転車も、私の歩行速度よりちょっと早い程度だったはずだ。
だがぶつかるときは、何だか決定的なことが起こってしまったかのようなあっけなさで、老人は地面に転げ、自転車はゆがむ。
まるで黒沢清の映画のように、事件は起こる。
「映画は恐ろしい」。
幸い老人は、とりあえずたいしたこともなく、自転車は決定的な被害を受けたもようだが、とにかく事は終わる。
先日は、妻のいとこの高校2年生の息子が無免許信号無視スピード違反ノーヘルメットでやはりタクシーに激突し、タクシーもバイクも大破。
息子は頚骨を骨折して未だ入院中。
これは何かの予兆なのか?
4月下旬のヨーロッパ行き、大の飛行機嫌いの私は、日々プレッシャーが高まっている。
フォン・トリアーやサム・シェパード、三国連太郎だけではなく、あのオランダのターミネーター、ベルカンプさえも飛行機嫌いだということだけが、心の支えである。