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boid日記 2008年3月

text by 樋口泰人


3月31日(月)

月曜日は自分が思っている以上にやることがあって、いつも予定していたことがやりきれない。
本日も同様。
しかも異常に怠くなり、気圧の変化と花粉のせいにしておく。

などなど、ダメダメな状態で帰宅して新聞のサイトを見ると、『靖国』上映中止の報道。
うーむ、こんな事なら試写で見ておけば良かった。
見てないと、「結局表現の自由はどこにもない」とかいう、あまりに一般的なことしか言えない。
『太陽』はOKでも『靖国』NG、という理由も分からない。
何となく想像はつくが、想像でしかない。
とりあえず、シークレット上映をやると良いのではないかと思いついた。
いや、単にシークレット上映ということではなく「シークレット上映」という作品名にしてしまい、「シークレット上映」という表記がされているところでは必ず『靖国』が上映されるというシステム。
1週間単位で、協力してくれる劇場を回っての上映。
いやまあ、実際はそういう問題でもないのだが。

ピート・ロックの新作『NY's Finest』は、より「語り」へと、重心がシフトしているように思えた。
複数の語り部の語る物語が重層的に重なり合い、ひとつのイメージを作り出していく。
前作『ソウル・サヴァイヴァーII』から4年近くも過ぎてしまったが、まあ、これくらいの年月が必要だったのだろう。
ジャケットの違いがすべてを表している。
もちろん、こういった手法自体は新しいものでもなんでもない。
多分、語り部たちの語る物語とそれを聴くピート・ロックの位置とが、微妙にこれまでとは違っている、ということなのだろう。

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NY's Finest →          Soul Survivor II →

3月30日(日)

1日遅れで墓参りに。
寺の参道もそうなのだが、寺まで行く裏道の桜並木が満開。
しかしさすがに彼岸も明けて1週間が過ぎ、しかも春とは思えない寒さの日曜の午後、墓地にはまるで人気なし。
都内にしては相当広い墓地にたったひとり、というのも寂しいものだ。
まあ、忙しさにかまけて各所に不義理をしているその結果ということもあり、身の引き締まる思い。
ただ、やはり、誰か誘えば良かったと思うものの後の祭り。

その後、西新宿オフィス・デポにて、タワー渋谷店での『作業日誌』イヴェントのチラシを大量にコピーしていたら雨が降り出し、そのまま新宿に出て映画を見る予定をキャンセルして帰宅。
送ってもらっていたDVDを見ることに。
ロイ・アンダーソンというスウェーデンの監督が作った『愛おしき隣人』。
『散歩する惑星』という映画を見たのはもう数年前。
あの映画を買い付けた友人にも、あの映画のプレスやパンフやポスターを手がけたデザイナーにも子供が生まれた。
あっという間に時は過ぎる。
この映画は、そういった子どもたちに幸あれと願わざるを得ないような内容になっていた。
『散歩する惑星』の惚けた味わいと『愛おしき隣人』というタイトルから微妙にずれた映画になっていた。
いや、『散歩する惑星』の方も、相当シリアスな映画だったはずだ。
だからなおさら、『愛おしき隣人』というタイトルにせざるを得なかったのだろうが、この映画に登場する「愛おしき」悲惨な人々に涙していると、しかしその悲惨な人々こそこの映画見ているあなたたちであると、あるいは、彼らを悲惨な目にあわせているのはあなたたちであると、最後になってそれなりにきつい一撃を受けることになる。

途中、雷鳴が延々と轟き続けるシーンがあって、あれを爆音でやると、この映画のイメージも随分変わるかなと思った。

本日は、昨日買った中でNICOLAY&KAYの『TIME:LINE』というのを聴いた。

nicolay.jpg
NICOLAY & Kay "TIME:LINE" →

J Dilla に捧げられたアルバム。
ちょっとエミネムにも似た顔のオランダ人トラック・メイカーNICOLAYの音は、ちょっと洗練されすぎているが、後半はなかなか良かった。
KAYことケヴィン・ジャクソンは、いわゆるギャングスタではないので何を歌っているのか歌詞カードが読みたいのだが、日本盤は出ないだろうねえ。

3月29日(土)

午後3時過ぎから友人の墓参りに行く約束をしたのにもかかわらず、昼食後に爆睡。
携帯に連絡が来たのも知らず、猫と共に怒濤の昼寝をしてしまった。
留守電には何度か、昨年亡くなった友人の妹さんから連絡が入っていて、「渡したい荷物も持ってきた」とのこと。
気がついたら5時ではどうにもならず。
夜は家にいなければならなかったのだが、微妙に時間があったため墓参りだけでも行こうと思ったのだが、まあ、明日もある。
というわけで、新宿HMVへ。

1ヶ月ぶりである。
時間もないので、ヒップホップ、ブラック系のいくつかを買った。
本日聞いたのは、これ↓。

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Raashan Ahmad →

Crown City Rockers のMC、ラーシャン・アーマドのソロ。
CCRの前作もそうだったのだが、このソロアルバムも、全体の印象としては21世紀のソウル・ミュージックと言えるような、大きくてやわらかいうねりを感じる。
これ1枚聞くと、洗練されたヒップホップ・アルバムの1枚ということになるのだろうが、30年後くらいにはソウル・ミュージックの1枚としてカテゴライズされているのではないだろうか。
1曲ごとにプロデューサーも違い、ライナーには「いい意味で散らばり感のある」という風にも書かれているが、いやこれは、ラーシャンの声が全てを統一しているから、見事に固まりとなったひとつの音楽となっているのであった。

猪股からは安室奈美恵の新譜がハンパじゃないというメールが届いていた。

3月28日(金)

数日前に中原が事務所から注文したこれ↓が届く。

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Dean Carter →

公的には私の名前で注文し私宛に届けられたものなので、早速聴かせてもらう。
この人に関しては全く知らなかったのだが、おそらく、50年代はエルヴィス・フォロワーのアイドル系のロカビリー・シンガーとしてデビューしたものの(ソロではなくグループの一員として)簡単には売れず、次第に本来の野性をむき出しにするパフォーマンスを身につけて、60年代半ば以降は強烈な個性を放つ得意なロカビリー・シンガーとして、数少ない熱狂的なファンを獲得していった人なのだろう。
まったく間違っているかもしれないが、上記のような物語を鮮明に想像できてしまうような、強烈なロックンロールが詰まったアルバムであった。

10年後に甦ったゾンビ的解釈によるロックンロールというか。
特に「Fever」の狂い方とポップなセンスとの見事な融合は絶妙。
その他、思わず笑ってしまうような不適切な音が適切に各所に配合されたユーモアと野性味溢れる音楽があった。
ジャケットからは想像できない音。

3月27日(木)

『中原昌也 作業日誌 2004→2007』の発売日である。
本の場合は本当の売れ行きが分かるまでしばらく時間がかかるので、発売日だからといってどうという事もないのだが、とはいえやはり、何となく緊張もしたりする。
そして引き続き、各所に発送、発送、発送。
そこそこ体を使うためか、やたらと腹が減る。

また、『POP BOTTAKURI』の方の、盤面デザイン、裏ジャケデザインもほぼ決まる。
火曜日に苦闘した盤面デザインは、タイトルその他を手書きということに決めた途端、あっさりと解決。
裏ジャケもそれに倣い、ほぼ手書き。
突然、いろんなことが一気に進む。
そんなものだ。
しかしやはり、再度試写のあったできたて映画を見に調布まで行けず。
そのままバウスへ。
映画祭会議。
本日は、期間中の昼の部の作品スケジュールがほぼ決まる。
ちょうど一作品分の時間が余ったのだが、この時間帯は、当日まで秘密のシークレット上映とすることに決める。
福袋みたいなものだと思って、楽しみにしていただけたらと思う。

しかし夜の部の、レクチャーと上映で苦戦中。
依頼していた人々がなぜか皆、その時期ヨーロッパにいるのである。
まさかこの人までヨーロッパツアーとか言わないよねと思っていた人まで、見事にヨーロッパツアー。
まだまだ悩みは尽きない。

そして、レイト上映中の『ゾンビ』終了後、いよいよ『デス・プルーフ』の爆音調整。
本日は、某新聞社の取材有り。
また、『デス・プルーフ』宣伝嬢たちの参戦もあり、賑やかなものとなった。
映画の方も、これくらいの爆音が当然でしょ、といわんばかりの暴れぶり。
しかも会話も聞き取りやすく、『レディ・イン・ザ・ウォーター』とはテイストはまったく違うが、やはりこれもまた、最適音量での上映となる。
しかし、車の暴走音の爆音は、本当にすごい。
映画を見るという行為と、映画館に行くという行為とが見事に一致する映画となったのではないかと思う。
とにかく知人友人誘って見に行きたくなる空気で充満した2時間であった。

3月25日(火)

先日出来上がってきたのはバウスでの先行発売分も併せた仮の300冊で、本日が本番。
というわけで、せっせと『作業日誌』の配送作業。
アマゾンや直接取引の書店などへの荷造りの一日であった。
関係者への発送は、結局全部やりきれなかった。
本来なら午後から調布まで、できたての映画を見に行くはずだったがどうにも時間を作れず。
昔は「忙しくて見られない」というのは言い訳で本当に見たかったら時間は作れると思っていたのだが、本当にそうも行かない場合もあるねえ・・・

夜7時過ぎから渋谷タワーレコードにて、『作業日誌』の発売記念イヴェントに関する打ち合わせ。
5月6日に、渋谷タワーの7階にて、公開インタビューというのを行う。
これは、「スタジオボイス」の4月売り号から始まる、ヘア・スタイリスティックス12ヶ月連続アルバム発売記念中原昌也連続インタビュー(そういえば連載タイトルはどうなるのだろう???)の、公開版。
17時から、書籍売り場の特設ステージにて、中原&湯浅学という組み合わせで行われる。
見学は無料で、タワー渋谷店で『作業日誌』を買った人にはサイン券がついていて、当日は公開インタビュー終了後、そのサイン券を提示すればサイン会に参加できる、というシステムらしい。
たぶん。
私の記憶だとかなり危ないので、詳細は追ってboid.net の中原情報コーナーに掲載。
あるいは、タワー渋谷店の書籍コーナーに問い合わせを。

「スタジオボイス」のインタビュー連載は、インタビューされるのが中原で、インタビュアーが毎号変わるという構成。
基本的に、その月に発売される新作についてのインタビューになるはずなのだが、果たしてどうなるか。

タワーとの打ち合わせ終了後、事務所に戻り、アルバム・ジャケット用の絵の仕上がりを待つこと30分ほど。
中原が完成した絵を持ってやって来る。
その場でスキャンして、適当に(笑)、ジャケット枠内に入れ込み、ジャケットの完成となった。
かなりいい加減かつ大胆な作業だったが、その決断力がジャケットにエネルギーを注いだ。
ものが生まれるとはこういう事なのだ。
その瞬間を逃さないというか、いきなりわしづかみにしてしまう感じ。

というわけで、『POP BOTTAKURI』の方も、おおよその作業に目処がついた。
あとは私が各所との連絡・事務作業を滞りなく行うのみ。

3月24日(月)

オールナイトの時に流した音楽についての問い合わせが来た。
後半の休憩時間でかかっていた、アジアっぽいポップスは何か? というもの。

当日の音楽は全て中原のコレクションだったのだが、アジアっぽいやつとは、タイのポップスのオムニバス。
中原の話によると、タイは今、かなり面白いことになっているらしい。
そういえば昨年、直枝さんのインタビューをしているときに、インタビュアーの中山さんがすっかりタイのポップスにはまっていて、その話を延々と聞かされたのだった。
いろんな音楽を嫌になるくらい聞いてきた人たちがこうやってタイに流れていくというのは一体・・・

というわけで、そのアルバムは、これ。

thai_pop.jpg

Thai Pop Spectacular: 1960s-1980s →

本日はオールナイト疲れでほとんど仕事にならず。
とはいえ、地味な作業を延々と。
何人かから『作業日誌』の感想が送られてきて、ちょっと元気が出る。

3月23日(日)

さすがに本日は、グダグダ。
そんな中、私の説明不十分その他によるいくつかの不具合が判明。
忙しく動き回っているうちに、自分だけが分かっていることを他人も分かっているものとして話したり伝えたりしてしまう、悪いくせが出た。
自分の前提は他人の前提ではないことを、繰り返し自分に言い聞かせ続けねばならない。

これは内部的なものであると同時に、例えば、爆音映画祭やさまざまなboidの製作物についても言えることで、とにかくこちらが前提としていることを、うんざりするくらい丁寧に伝え続けねばと、改めて思う。

夜、本日から始まる『レディ・イン・ザ・ウォーター』爆音上映の確認に行こうと思っていたのだが、夕食後、一瞬気を許したすきに眠ってしまう。
うーむ、果たしてどのようなことになっていたか。

3月22日(土)

爆音聴力破壊オールナイト。
映画祭やら作業日誌やら月刊ヘアスタやらでバタバタのまま突入。
果たして昨年のような盛り上がりを見せるかどうかと心配されたのだが、本年も見事超満員。
まさに「密室」の熱気の中のオールナイトとなった。
皆様お疲れさま。

中原・阿部トークの阿部君の発言によれば、現在公開中の『ポストマン』は相当なことになっているらしい。
どうやら、『デス・プルーフ』なみのチェイス(自転車の!)有り、とのこと(笑)。
やはり会場にやってきていた柳下君からも推薦の弁。
こういう思わぬ情報が入ってきたときは、迷わず見に行く身軽さが要求される。

上映終了後は、先行発売した『作業日誌』、それから『映画の頭脳破壊』他を会場にて購入された方のためのサイン会となる。

というわけで、上々のオールナイトとなったわけだが、しかし、来週の金曜日まで、爆音レイトが続く。
爆音により堂々とした風格を持ってしまった『レディ・イン・ザ・ウォーター』、フィルムが劣化していく良さを実感させてくれる『ゾンビ』、そして今回の爆音のメイン・コンテンツでもある『デス・プルーフ』へと続く。
『ゾンビ』を見て『デス・プルーフ』を見れば、タランティーノが映画の中に何を見ているか、はっきりと体感できるのではないかと思う。

とはいえ、今回の最大の失敗は、初日をオールナイトにしてしまったことである。
いきなりヘロヘロになって、レイトへの体力が・・・(笑)。

ただこうやってあれこれやり始めてみると、毎月バウスのレイト枠2週間くらいを定期的に借り切って、ダラダラと爆音をやっていくのが良いのではないかと思い始めている。
爆音で上映する、ということで、見逃していた映画や作品自体に興味を持てなかった映画を、改めてスクリーンで見るきっかけになるようなイヴェント。
爆音映画祭以降の爆音上映の、さまざまな形が少し見えてきたような気がした。

3月21日(金)

『中原昌也 作業日誌 2004→2007』が出来上がってくる。
いよいよ後は、売るだけとなった。
もちろんこれが本当に大変で、これからしばらくプロモーション作業が続く。
本日は、各所への発送作業あれこれをしているうちに、夜。

荻窪に行き、『作業日誌』とヘア・スタイリスティックスのアルバム『POP BOTTAKURI』共同のチラシを受け取り、その後バウスへ。
帰宅後、ようやく夕食をとるともう12時過ぎで、そのままぶっ倒れて気がつくと朝5時前。
うーむ、やり残したこと多数。

そして今夜はもう、「爆音聴力破壊」である。
見ていただければ分かるのだが、かなり凄い並びになっている。
まあ、さすがに聴力が破壊されることはないが、「映画を見る」という体験に対するこちらの無意識の規定をガツンと破壊してくれることは確かである。
昨年は超満員になってしまったので、今年は逆にまったく人が来ないんじゃあないかとか、不安ばかりがよぎるが、是非ご来場を。
出来上がったばかりの『作業日誌』も先行発売します。
入場整理券の販売は、19時からです。

3月20日(木)

昨日はboid事務所を開設して1周年だったのだが、お祝いをしている余裕もないまま、2年目に突入。

本日は、木曜日恒例の爆音調整。
『レディ・イン・ザ・ウォーター』と『13回目の新月がある年に』。
『レディ・イン・ザ・ウォーター』は、ほとんど調整する必要もなく、音量を上げただけでOK。
爆音、というか、これこそこの映画の適正音量というべきものになった。
オーケストラの音楽の堂々とした存在感は、ハリウッドのA級映画の風格。
こういったオーケストラの音は、いくらでかくしてもどぎつくならず、その豊かさだけが増幅されるので、それだけですっかり物語の虜になってしまう。
もちろんそれはそれで、かなり危ないことでもあるのだが。
その危なさと共に、見る映画となった。
いずれにしても本当に、これくらいの音量でやるのを、この映画自体が要請しているように思えた。

『13回の』の方は、爆音にしなければならない必要は特になく、オールナイトの4本の並びの中で、この作品があるとこのオールナイトの意味が際だつ、という意味で見ていただけたらと思う。
とはいえ、これを爆音で見ると、ファスビンダーのいい加減かつ繊細な音の重ね方に驚くことになるはずだ。
時間を刻む時計の音の音量は、絶対に通常の映画の時計の音の音量を超えているし、ここでこんな音楽を使うかという映像と音楽の歪なバランスやゲームセンターの音量やそのシーンの長さの過剰さなどなど・・・
それらが全て、どうしようもなく悲惨な主人公の人生を厳しく見つめ、そして祝福しているように思えてくるのである。

音もそうだが、やはり、DVD上映とはいえ大きな画面で見る、その画面構成を見るだけでも十分に刺激的だった。
ただ、シーンによってDVDとは思えないほどきれいにでているところと、さすがにDVDの画面だなあと思えてしまうところとが、はっきりと分かれていたのは残念ではあった。

しかしどうしてこれがセレクションされたかというと、もちろん、スーサイドの「フランキー・ディアドロップ」が延々と流れるシーンがあるため。
このシーンを見ると、ファスビンダーはヴェンダースよりずっと音楽と映像とをつなぎ合わせるマジックを手中に入れていた人なんだと分かる。
どちらが良いとか悪いとかではなく、何か、音楽の中にある核心を一気にわしづかみにするコツを、ファスビンダーは知っていたというか・・・
そんな気がする。

明日は、『中原昌也 作業日誌 2004→2007』が、いよいよ出来上がってくる。

suicide.jpg
Suicide →

3月18日(火)

なんだかんだ言って、朝から夜まで働いている。
『作業日誌』はいよいよ出来上がりを待つばかりになったのだが、こうなるとあとはどれだけ告知してどうやって売るかの作業。
本日は、そのチラシ作りや書評その他の配本のための準備、それから映画祭のためのあれこれ。
チラシの出来上がりが予定の午後5時から数時間以上遅れたが、まあ、良い感じの出来映えになったのでそれはそれで良し。

昼過ぎには、じゃがたらの篠田さん(故人)の活動を記録した映像作品を持って、旧友が訪ねてくる。
20年ぶり、というのはオーヴァーだが、10数年ぶりか。
でもそういった感慨もなく、何となく昨日も会ってグダグダしていたようにダラダラとする。
私もそうだが、旧友の方も、ある種の人間的な熱情に欠けているためなのだろう。
しかし熱情に欠けていようがいまいが、時間は過ぎるのだった。

3月17日(月)

さすがに朝7時30分から新宿某所にて篠崎・松田チームの撮影エキストラ、というスケジュールだと、昼過ぎると滅茶苦茶眠くなるねえ。
しかも、朝食の最中に前歯の差し歯がポロリと抜け落ち、エキストラだから関係ないものの一日のしょうもない始まりとなったのであった。

撮影は某書店にて。
開店前までの限られた時間を使ってのもの。
WOWOWの放映用のTVムーヴィーなのだが、現場に行くとスタッフの数の多さに驚く。
限られた時間の中でのスタッフの動きを見ているのはなかなか面白かったのだが、こういう小さい作品のときには思い切ってスタッフ10名とか、そういうやり方はできないのだろうかとも思う。
テレビ局の予算で、そのテイストにあったものを作らなければならないときは、たとえローバジェットの作品であっても、そういう実験的なやり方は逆に難しいのかもしれないのだけど。
まあ、私の目から見たら「数多くの」スタッフでも、他作品に比べたら十分に少ないスタッフだったのかもしれない。

篠崎は、非常にシンプルな指示を各所に出し、子役の疲れにも気を使い、その落ち着いた雰囲気の中、撮影は滞りなく終了。
16日間で2時間前後の作品の全てのカットを取り終えないとならないのだという。
あと1週間弱、大変な日が続くかと思うが、この調子で案外あっさりと事を終えてほしいと思う。
こういった、普通に映画を作って普通に映画を見るという穏やかなスタンスが、各方面に伝播していってくれると良いのだが。

それから、撮影終了後に、同じくエキストラで来ていた若者から、「爆音映画祭のリクエスト締め切りはいつか」という質問を受けた。
23日までである。
その時私は、抜け落ちた前歯のことが気になっていて、まともに答えられていなかったと思う。
申し訳ない。

で、私はその後急いで歯医者に。
無事差し歯を接着して、事務所に。

あれこれ予定していたことは全然片付かず。
さすがに眠くもなり、通販の配送方法を間違えてみたり、別件の問い合わせに全くデタラメな答えをしていたりと、ダメダメの極地。
ようやく購入したエリカ・バドゥ(先日の日記ではエリカ・パドゥと書いていて、中原に間違いを指摘されてしまった)を聴いて気合いを入れようとしたのだが、調子のでないまま帰宅時間を迎えたのであった。

あと、『中原昌也 作業日誌 2004→2007』の予約を開始した。
boidストアでは22日から先行発売である。
22日からの爆音聴力破壊のバウスでも先行発売。
どちらでも、都合のいい方でご購入いただけたらと思う。
boidストアでご購入で、郵便振替希望の方は、入金の確認まで数日かかってしまうので、そのあたりも計算に入れて、「先行発売」分を注文してください。
書店、アマゾンは27日より発売。

3月16日(日)

土曜日はバテバテ。
事務所に行ったものの、あまりの頭痛で、仕事半ばにて帰宅。
頭痛薬を飲み寝込んでいたら、今度は妻がひどい下痢を起こし、ノロウィルスに感染かと、ちょっとした騒ぎになる。
しかし「私は来週忙しいんだから、絶対に移さないでくれ」と、姫は冷たい。
老いた親は、自力再生あるのみ。

で、日曜は完全休養、という毎週のパターン。
私も妻も、だいぶ回復。
もうひとりの姫も、午前中暴れすぎたのか、夕方はすっかりグータラしている。

そうそう、土曜日は事務所にて、頭痛を和らげるために先日直枝さんから教えてもらったDuffy →のアルバムを聴いていた。
これがなかなか良くて、もはや60年代のブームというようなものも超えて、21世紀のやり方でかつて存在した音を再生している、という感じ。
何と言ったらいいのか、それはある「遅さ」を獲得していて、しかしダウン・トゥ・アースな遅さではなく、もっと儚い遅さ。
かつての記憶を寄せ集めてようやく形にする、その時間が作りあげる遅さというか。
なんとも嬉しい1枚であった。

そういえば、先日大塚が持ってきたキャット・パワーのニューアルバムには、スプーナー・オールダムまで参加して、ペン&オールダムの曲までやっていた。
そちらも早めに手に入れねば。

jukebox.jpg
Cat Power "Jukebox" →

3月14日(金)

本日は、午前中から、夕方過ぎまで、いろんな人に会い、打ち合わせ、取材などなど。
時間が取れず、map小田君に会い損ねる。
映画祭の件で、諸々話さねばならなかったのに・・・

1日中、人にあって話し続けていると、さすがに事務所に戻ったときにはノドがガラガラ。

で、メールをチェックすると20年ほど会っても連絡を取ってもいなかった知り合いからメールが。
その用件は、これがまた恐ろしいことに、時間軸は昨夜に遡る。
爆音調整の帰り、バウスの映写&音響担当の小島さんと、シークレット作品について、あの奇妙な空気感はやはり80年代前半のものだという話をしていて、その際に、工藤冬里さんのマヘルを例に出して、あのダラダラ感を説明していたのである。
バウスでもマヘルはライヴをやったことがあり、しかも当時は広い方の劇場ではなく狭い、「ジャブ50」と呼ばれていた頃の、現在のバウス3にてやったのだった。
そのライヴは小島さんや西村さんも企画に加わってのもので、私は知り合いにたのまれて、ビデオ撮影していた、などなどという昔話になったのだが、そこでようやく再び、時間軸が本日。
その、私にビデオ撮影をさせた知り合い、というのが、本日メールを送ってきた知り合いなのであった。
何もあんな話をした翌日に、20年ぶりくらいで連絡をよこさなくてもと思うのだが。

しかも、別場所で私が撮影を手伝ったマヘルのライヴも入っているビデオをDVDにするとか上映するとか、そのような用件で、さらに驚く。
昨夜からあまり寝ていない疲れと、本日の疲れと、その驚きとで、一体そのビデオがどうなるのかどうしたいのかがうまく把握できず、結局、来週、久々に会うことになる。

実は本日はその他にも、数年ぶりで会う知り合い2名。
いやあ、変な日もあるものだと、それだけですまして良いものかどうかと何かを疑いたくなる1日であった。
でもまあ、歳をとるというのはそういうことなのだろうとも思う。

それから、先日のジュリー・デルピーの映画の宣伝の方から連絡があり、「タイトルが違ってます」と。
そうです!
『パリの2日間』ではなく、『パリ、恋人たちの2日間』でした。
いやあ、見たばかりの映画のタイトルをあっさり間違えるこの大ざっぱさを、いい加減何とかしたいのだが、それができたら今頃こんなことしてない。
やはり、目が悪いのではなく頭が悪いのだと、再確認。
反省して、デルピーさんのファースト・アルバムを久々に聞く。
リンクレーターの『ビフォア・サンセット』が見たくなった。

jd.jpg
ジュリー・デルピー →

3月13日(木)

ヘア・スタイリスティックスの連続シリーズのタイトル、その第1弾、第2弾のアルバムタイトルと曲名が全てきまる。
ここまでくると、あともう少し。
盤面のデザインの構想も決まり、あとはその仕上げと、ジャケットの画像を中原が描けば、おおよそ完成。
もう少しである。
タイトルその他、明日か明後日には発表。
出し惜しみしているわけではなく、今、深夜の爆音調整から帰ってきたばかりで、とりあえず「決まった」という報告だけで目一杯なのであった。

爆音調整は、22日のオールナイト分、『要塞警察』とシークレット作品。
『要塞警察』は、最後に高音を上げてもらったのがポイントだった。
聞こえなかった音も聞こえてきて、滅茶苦茶良い感じになる。
爆音に増幅された、独特の疲労感と達成感が何とも言えない味わいを醸し出す。
アクションシーンの音も、笑っちゃうくらいの音になった。
今の映画から見ると、ちょっとテンポの悪いカット尻、カット頭が微妙に長い編集も、フィルムの編集はこうだったんだよなあという落ち着きもあり、本当に嬉しくなってしまった。

シークレット作品の方は、最初、あまりの音の悪さに呆れていたのだが、次第に解決。
80年くらいの、もうどうにもならないNYの空気が、そのまま画面と音に現れている。
まさにノー・ニューヨーク。
私にとっては、故郷のような映画であった。

本日は、この爆音調整の前に、ボランティアとして手伝ってくれている方々に集まってもらい、顔合わせを行った。
全員が参加できたわけではないのだが、とにかく、顔の分かる関係で続けていけたらということもあり、特別な用件があったわけではないものの、集まっていただいたのだった。
時間のある方々は、その後の爆音調整も見学。
単に、上映された映画を見るだけではない何かをも見てもらえていたら嬉しい。

それから、ボランティアの方々との話し合いの中で、「上映作品リクエストの決選投票の期間が短いので、気付かないうちに終わってしまう可能性有り」との意見が出た。
確かにそういう可能性も大いにあるので、締め切りを1週間延ばし、3月23日までということにした。
上映その他のその後の対応が少し大変になるが、まあ、なんとかなるだろう。

というわけで、なんだかよく分からないまま、激しくあれこれやった1日だった。
明日は、さらに激しい。

3月12日(水)

いよいよ爆音上映リクエストの最終投票開始。
boid.net のトップページからも行けるので、是非、一票を。
上映権があやふやだった、『プライベート・ライアン』も『宇宙戦争』も『フェスティバル・エクスプレス』も確定したので、どれが上位に来ても上映可能。
本当はキューブリックができると良かったんだけど、さすがに上映権その他の問題が・・・

本日は、ごごからぴあに行って、あれこれの打ち合わせ。
PFFの荒木さん、ぴあ本誌の古口さんと。
諸々地道に進んでいるが、いざやるとなると、急に大変なことになりそうな感じもあり、さてどうなるか。

boidの事務所からぴあの社屋までは微妙な距離で、歩けば歩けないこともなく、電車に乗るとそこそこの大回りになって、時間的には歩いていくのと大して変わらない。
で、本日のように大量の花粉は飛んでいるもののそこそこ気持ちのよい日には、歩きを選択してしまうことになる。
でも、歩いてみると、結構な距離なんだよねえ。
ただ、運動不足解消にはちょうど良し。
その帰り道、麹町方面から四ッ谷に向かって歩いていて、ふと頭を上げると真っ正面の空に、オレンジ色のでっかくてまん丸な気味悪い太陽が。
思わず携帯をとりだし写してみたのだが・・・

うーむ、何も写っておらず。
一体これはどうしたことかと思う。
露出その他の問題なのだろうが、しかし麹町から四ッ谷方向というのは、南から北に向かって歩いていたはずで、だとするとそんな方向に太陽があるはずはなし。
むむむと思い、地図をよく見てみたら、麹町から四ッ谷方向とは、ほぼ西に向かっているのだった。
四ッ谷あたりで方向が分からなくはずだと改めて納得したのだが、納得はしても、体はまだ、「いや、あれは北を向いて歩いていたのだ」と言っている。
この、まったく根拠のない「正しさ」はいったい何なのだろう。

とはいえ癪なので、私が見た太陽を再現するとこんな感じだったのである。

3月11日(火)

ようやく少し仕事が落ち着きを見せ始め、滞っていた連絡その他を各所に。
2,3日前、安井君から、「エリカ・パドゥの新作がかなり良い」との知らせがあったので、ネットで注文したところに中原からも「エリカ・パドゥがいい」とのメール。
一体この連鎖は何だろうと思うものの、おそらくこういった小さなネットワークだけが確かなものなのだ。
先日は青山から、ジミ・ヘンの10数枚組こそが凄いのだという連絡が来たし、直枝さんからもDuffyという新人のアルバムを紹介された。
どれも、一般的な宣伝戦略やら広告代理店の操作やらとはまったく関係なく、まあだからそこに乗ったりもしつつ、こうやってネットワークされていくわけだ。

erykah.jpg duffy.jpg
Erykah Badu →         Duffy →

映画も早く、こういった小さなネットワークによって動いていくようになるといいのだがと思いつつ、しかし映画の場合は製作の規模が違いすぎるからそうも言っていられない。
そのあたりが面白さでもあるし、常に苛立つところでもある。
ただ、ジュリー・デルピーが監督した『パリの2日間』のような映画を見ると、ああ、映画もようやく時代にあった小ささを獲得しつつあるのだと思える。
パリでウディ・アレンをやっていると言ってしまえばそれまでだが。
しかし、実の両親まで登場させての家族の会話には驚かされる。
でもあれは、演技でもあるし、かなり現実に近いものではないかと想像される。
90年代初頭にジュリー・デルピーにインタビューしたときの彼女の話しぶりが、まったくあのままだったのだ。
インタビュー時の彼女は今回の映画の調子そのままで、彼女も出演したことのある当時世界中から注目を浴びていた某有望若手フランス人監督の悪口をまくし立てたのだった。
日本人相手にいきなりそんな内輪のことをワーワー言ってくるそのスタンスに私はちょっと驚きつつ、しかしその言葉のクールさに嬉しくなったりもした。
この映画も、そんな彼女の生き方がしっかりと出ているように思えた。
つまり、私的であることと公的であることとが限りなく接近しつつ微妙な距離を保つ理性と共にある映画。

それから昨日の続き。
3月22日のシークレット上映のうちの1本は、ファスビンダー。
『13回の新月がある年に』を上映。
果たしてこれを爆音で上映する必要があるのか? という見方もあるのだが・・・、しかしそれは見てのお楽しみ。
この作品が、爆音で一体どうなるのか、ポイントの音はどこなのか???

別にDVDで見ればいいや、という方には、これまでのファスビンダーBOXだけではなく、単体の発売も始まったので、そちらの購入も可能。

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13回の新月がある年に→

あと『ワイルドバンチ』は堂々のフィルム上映可能。
とはいえ、これは、リクエスト最終投票で上位3作品にならなければ上映できないのだが・・・

それから、最終投票に残った『プライベート・ライアン』と『宇宙戦争』は、パラマウント・ジャパンの対応次第で上映できなくなる可能性有り。
事態がはっきりし次第、映画祭HP上にてお知らせします。

3月10日(月)

『作業日誌』の最後の直しを印刷所に渡す。
あとは14日にデザイナー倉茂君が印刷所に出向いて最後のチェックをして下版。
22日のオールナイトでの先行発売にも間に合った。
22日は、トークもあり、爆音もあり、本もあるという賑やかな日になる。
お楽しみに。

それから、2本のシークレット作品のうちの1本は、DVD発売元から、宣伝にもなるので、できれば事前に告知してほしいとの知らせ。
シークレットにしておいた方がお楽しみ感はあるかと思うのだが、どうしようかと中原に相談しつつ、明日には発表してしまうかもしれない。

また、いよいよ爆音映画祭のリクエスト作品の最終投票候補作が出そろう。
しかし、あまりに横に広がりすぎたため、同得票数での作品が増えて、上映可能な上位作品だけでも15作品ほどになってしまった。
それに事務局推薦作品を入れて20作品になる。
投票システムの問題さえなければその20作品からの最終投票となる。

で、事務局案の中で、本日、急遽候補に入れたのが『ワイルドバンチ』
まさかこの映画が上映可能でフィルムもあるとは思ってもみなかったが、どうやらワーナーに権利が残っているらしい。
明日、本当にプリントがあるかどうかを最終確認して、20作品の中に入れたいと思う。
これがフィルムで観られる機会なんてめったにないので、それだけでも投票の価値有りではないか。
爆音上映かどうかも関係ない、という人も出てくるかもしれないが、とにかくこれも爆音にて。
あの銃撃戦が一体どんな音響になるのか・・・
爆音の効果が最大限に発揮されたとき、あのスローモーションがまさにリアルなスピードとして感じられるのではないかと思っている。
なんて、つい2,3年前まで『ワイルドバンチ』見てなくて青山に怒られた人間に言われてもねえ(笑)。

いずれにしても、こればかりは投票上位3作品という厳しい数字の判定有り。
いったいどうなることやら。

3月9日(日)

昨日は、午前中からひどい下痢で大変な一日となった。
まあ、夕方くらいから何とか持ち直したのだが・・・
『作業日誌』の最後のチェックもままならず、月永に任せる。
元気だったとしても、私の場合、校正はほとんど役立たずになるのだが。
必要なファイルも、ファイル名をまったく違うものと読み間違えてゴミ箱に捨ててしまってあとから大騒ぎ、というのは頻繁にあって、目ではなく頭が悪いのではないかと時々心配になる。

というわけで、本日は、ほぼ完全休養日となった。
とはいえ、期末試験の終わった子どもの買い物に付き合ったり、映画を見たりした。
『ジャンパー』。
公開2日目の日曜日の昼、ということで相当混んでいるかと思い、まずは映画館に行って整理券を貰おうとしたら、混んでないので整理券は発行していないとの返事。
開始時刻ちょっと前に言ったのだがその言葉通り、半分くらいの入り。
90分程度の短い映画であった。
ドラえもんのどこでもドアと同じ要領でどこにでも行けてしまう能力を持った人たちの話なので、途中経過がない分、上映時間も短くなるということか。
というか、なんか、もの凄く軽く作られている映画だった。
ハイファイの宅録みたいな感じ。
『ゾンビ』や『デス・プルーフ』の劣化していくフィルムの時間と共にある映画とはまったく違う作り方をされている。
しかも、それこそが完全に当たり前になってしまった地点から始まった映画、というような・・・
内容的には特にどうのこうの言うようなものではないのだが、とにかくその気軽なスタンスが気になった。
最初のタイトルが出てくる辺りとか、仕上げ前の、「こんな感じでやってみようかと思うんですが」というたたき台みたいな感じにも見えるんだよねえ・・・

その後、バタバタして、一緒に見た子どもに感想を聞くのを忘れたことが悔やまれる。

3月7日(金)

『作業日誌』の色校があがってくる。
いよいよもう少しで校了である。
こんな表紙になった。

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なんだかえらく立派なものに見えるから不思議だ。
だが、多分、立派なものなのだ。

中原もやってきて、中身その他を軽く確認。
どうやら本当は削った方が良かったかもしれなかった箇所を発見するが、まあ、当事者には笑って許していただくことにする。

その他、昨夜の『ゾンビ』がいかに『デス・プルーフ』状態であったか、という話。
つまり、フィルムの傷や欠損もまた、映画の一部であることを身を以て証明し続ける映画であったかという。
フィルムが傷ついていくこと、切れてしまって取り返しのつかない状態にもなることもまた、フィルムの魅力であることが、十分に伝わってくる映画であったのだ。
その映画のタイトルが『ゾンビ』というのもまた、なかなか良いではないか。

夜は、吉祥寺タワーレコードにて、爆音映画祭のタワーレコード枠の作品選定と、タワーレコードでの爆音展開についての打ち合わせ。
いろんなことが決まる。
ついでに、3月の聴力破壊も協力していただくことになる(はず)。
とにかく自力だけではもはや身動きできないところに来ているので、さまざまな人に動いていただきつつ、面白がって貰いつつやっていくしかない。
しかし、いろんな人とのやりとりのなかで、どんどんと自分のペースが分からなくなっていく。
まあ、それも良し。
家に帰ると完全に猫ペースなのであった。

それから、4月の爆音調整には、海外からのゲストが参加することがほぼ決まる。
監督自ら、自作の爆音調整を行うのであった。
ただまあ、プロモーションのための来日の時間を縫っての、しかも深夜の爆音調整ゆえ、実際にできるかどうかは当日になるまで確定ではない。
お楽しみに。

3月6日(木)

午後から、東横線学芸大学駅にある某社に行って、『作業日誌』の音楽関係店舗への流通のお願い。
学芸大学駅に降りるのは、おそらく大学の時以来。
25年ぶりくらい。
おしゃれな店が多いなあときょろきょろしているうちに、方向がまったく分からなくなる。
念のため地図を持っていって良かった。

夜はいよいよ爆音調整。
これから爆音映画祭まで、毎週1回か2回、延々と続く長丁場。
本日は映画祭用ではなく、「聴力破壊」用の『ゾンビ』を。
これがまた、かなりのもの。
爆音ガレージパンク、といった趣。
ボロボロのフィルムのノイズをも味方につけ、モノラルの音の固まりが暴れまくる。
いやあ、これまでドルビー以前の作品は極力避けてきたのだけど、こんな感じならまったく問題なし。
音を重ねる感覚と物語を語るテンポの大らかさや適当さ、でも核心は外さない的確さのおかげ。
ショッピングセンター内でのバイクの暴走シーンのいたずらな長さは、まさに爆音上映のためにこそあったのだと思える。
多分、当時の製作者たちも、これくらいの爆音で見て、キャーキャー言いながら作っていたのではないのだろうか。
そんな気がする。
爆音上映だけで見ると、『イージーライダー』とは比べものにならないくらい素晴らしい。
やはり爆音上映の場合、既成の曲がメインのものは弱いのだろう。
こういった、ある種「デタラメ」なミックス感のある音の方が、俄然威力増大。
本日は今年になって一番のヘロヘロ具合だったのだが、かなり元気になった。

3月5日(水)

ああ、自分は映画の宣伝というものにはまったく向いていないなということを思い知らされた日であった。
まあ、全部自分のせいなので、何とも言い難し。
向いてないのなんて初めから分かってるのにねえ。

『作業日誌』の入稿を済ませ、夜は、今回の爆音映画祭に、サーフ映画を提供してくれるグラッシィの方々と打ち合わせ。
爆音映画祭のあとに新宿K's Cinemaと渋谷Q-AXで行われるサーフ・フィルム・フェスティバルとの連携を測る。
いずれ爆音でもサーフ・リヴェンジのリヴェンジをと思う。
でも、爆音映画祭の上映作品リクエストでも、サーフィン映画はあまり入ってきていないから、やはりなかなか難しいのだろうなあと、しょんぼりする。

3月4日(火)

明け方、何やら重苦しい夢を見て目が覚めると、ネコが私の首の上で、まきつくようにして寝ている。
あまりに気持ちよさそうに寝ているので、何もできず。
うーむ、致し方なし。
ひたすら耐えるのみ。

朝9時に神保町にある書籍流通の会社にて、『中原昌也 作業日誌 2004→2007』の説明会。
小さな流通会社なので、もっと雑で、適当な説明会だと思って油断していたら、凄く真面目なものだった。
もっとちゃんとした資料などを作っておくべきだったと反省。
ただまあ、以前の私を思えば、こうやってこの時間に神保町にいられるだけでも大進歩だと、自分を慰める。
しかし、朝の電車は本当に大変だねえ。
通勤だけで疲れる。

事務所に戻ったのが10時。
この時間で一仕事終えているというのは、なかなか良い気分である。
しかも、事務所内の朝の光もまたなかなか良し。
これからはしばらく早朝出勤をしてみようかと、できもしないことを思う。

しかし昼食を食すとさすがに眠くなる。
サラリーマンの方々は午後の怠くなるひとときを一体どのようにやり過ごされているのだろうか。
それとも眠くなったりしないのだろうか。

とはいえやることはやらねばならぬ。
昨日の「朗報」の件で、某映画祭のディレクターと共に某社を訪問。
今後の手順を相談する。
実現できる可能性はどれくらいだろうか。
完全な形ではできないのだが、未来のための第1歩として、ある程度のことができたらいいのだが。
上映権の問題、権利料の問題、字幕作成の問題など、クリアしなくてはならないことは数多い。
とにかく1本の映画を上映しようとすると、その権利料でそれなりの額、フィルムを取り寄せ、字幕をつけるとなると100万単位の金がかかる。
それを埋め合わせるだけの動員があればいいが、例えば、1000円の入場料だとして100万円円稼ぐには1000人の動員が必要だが、映画館にも料金を支払わねばならないから、大体2000人の動員が必要になる。
さらにそのために必要となる宣伝費などのことも考えると、3000人動員したって果たしてプリント代と字幕の料金をカヴァーすることができるかどうか。
映画祭のように、1本の作品を2,3度しか上映できないような場合には、基本的に赤字である。
頭をかかえるしかない。
まあ、そのために助成金などのシステムがあったりするのだが。
ある作品を買い付けて興行していくことを生業とする配給会社の苦労も偲ばれる。

その後、事務所に戻りボーッとしているところに、斎藤陽一郎がやって来る。
陽一郎の事務所がすぐそばにあるのだった。
で、まあ、ダラダラとあれこれ。
例のバンドの話など。
デビューの日はいつになることやら。
陽一郎が楽譜に囚われなくなった日、ということは確かなのだが。

その後、爆音映画祭のHPのあれこれについての打ち合わせ。
こちらの映画祭は、日本の上映権のあるプリントを使ってのものなので、上記のような高額の金銭的苦労からは逃れられている。
というか、そうならないようなものをやるしかない、という状態でもある。
そこで何ができるか、何をすると面白いか、ということに頭を使うのみ。
世界一音は大きいが、世界一予算規模の小さい映画祭なのであった。

3月3日(月)

ひな祭りである。
といっても、何事も無し。
終日、せっせと各所に連絡、事務作業、そして打ち合わせ。
相当焦ってテキパキしたつもりだが、予定の5分3ほどしかできず。
営業や宣伝の人たちの苦労を思い知る。

そんな中、ちょっとした朗報もあり。
朗報といっても、まだ発表できる段階ではなく、ここまでくることの大変さを考えると、そう簡単にそれが実現するはずもないわけだから、本当に実現したときに喜びたいと思う。
とはいえ、早速明日からはその実現のために動き出さねばならない。

午後、某女性小説家に、『作業日誌』の帯や宣伝のためのコメントの件で連絡を取り、文面が決定。
boidにしては非常に珍しい、女性からのコメント。
というわけで、これもお楽しみに。
まあ、この日記を読んでいただいている方々には、コメントがあろうがなかろうが、是非買っていただかなくては、というところでもあるのだが。

本日の昼食は、昨日のリヴェンジというわけではなく、焼き魚の美味しい「カフェ」へ。
なぜか80年代ふうの、軽井沢か清里にでもありそうなつくりの店で、とてもじゃないがそこで焼き魚がでるとは思えず、しかもそれが美味しいなど誰にも想像が付かないつくりの店なのだが、なぜか非常に丁寧に調理されていて、付け合わせの煮物なども優しい味で、こういったせかせかした日のちょっとした休息にはもってこいなのであった。
しかしおそらく開店当初はもっとカフェらしい店だったはずなのだが、実際、手作りのロールケーキなども販売していて、それもまた美味しそうに見えるから、一体何故ランチだけが「お袋の味」路線になったのか、これはこれで非常に謎なのである。
でも、ランチ時はいつも非常に混んでいるので、やはりあの美味しさは伝わっているのだろう。

夜は、『作業日誌』の帯の裏表紙側に入れるための日記からの抜粋に悩む。
デザイナー倉茂、編集月永からも抜粋箇所のアイディアが出てきて、どれも良いのだが、表に来るコメントその他のユーモアと呼応するような部分を選びたいと読み進むうちに訳が分からなくなる。
単に、ある日に買った商品だけの羅列でも面白いかとも思う。
この日記全体がある意味で壮大なユーモアの固まりなので、そう簡単にはこちらの思惑通りのものが現れたりすることはないのだった。

3月2日(日)

昨日から延々と週明けまでの原稿書き、及び『作業日誌』の仕上げ作業あれこれ。
地味な2日間であった。
というわけで、ちょっぴり成長した姫のお姿を。

 

我が家は完全に姫中心に回り始めているのであった。

ああ、そうそう。
本日も、実は、プチ昼食事件有り。
といっても先日の食堂ではなく、事務所ビル目の前にある中華食堂にて。
私の昼食は大体変な時間になってしまい、3時過ぎだったりするため、食事場所が限られてしまう。
この中華食堂はいつでも食せるので、時々入ることになるのだが、私のお気に入りは、酸辣麺というやつ。
黒酢の味付けで、辛みが入ったラーメン。
初めてパリに行ったとき、フランスの料理が口に合わず、中華料理店でこのスープ(酸辣湯)ばかりを頼んでいたのだった(確か、「スープ・ペキノワ」と呼ばれていた)。
まあ、本日もそれを頼んだのだが、どうもいつもと盛りつけが違う。
どうやら、休日なので、平日営業のときと料理人が違うようなのだ。
まあ、それはそれ、とにかく食い始めると、死ぬほど辛い。
私は、酸っぱいものも辛いものも、かなり平気な方なのだが、2,3口で口の中がヒリヒリして鼻水が出始める。
たとえば、トムヤムクン・スープのラーメンを頼んでこの辛さだったとしたら、それはたのんだ私が悪いと思える。
しかし、たかだか酸辣麺でどうしてここまで辛くされないとならないのか・・・
とはいえ、辛くて食えないというのも悔しいので、最終的には汗まみれになりながら、ようやく食い終えたのではあった。
まあ、ただそれだけのことなのだが……。
次は平日に行って、再び同じ辛さのものが出るかどうか確かめてみようと思う。