
『殺しのはらわた』によせて
◆映画のはらわたを目にするには、こうするしかない。
そう覚悟を決めた篠崎誠は、
味方のエージェントKKの膝から下を、あっさり切り落としてみせる。
その決死の身振りの正しさと、KKの絶命ぶりの美しさとを、
各自、劇場の大きなスクリーンで、しかと確かめられたい。
=蓮實重彦(映画評論家)
◆殺人のダイナミズムと、奇妙な静謐さが同居する『殺しのはらわた』には、「生」そのものの持つアンビバレントさが凝縮されている……と、したり顔をするまで もなく、殺し合いほど観ていて楽しいものはない! 一撃必殺! これが命の毟り合いだ!
=高橋ヨシキ(映画ライター/デザイナー)
◆合理的で見せ場満載な殺人シーンに胸がすく思いです。殺されないために殺すという理にかない腑に落ちるルールが、能率的であるほどに狂気を放つ殺しの神秘。日本映画界のお歴々による、新春かくし芸大会のドラマ風味な死に様もステキです!
=真魚八重子(映画ライター)
◆殺し、殺されるためだけに生きる者たちの凄まじさ。
ヒッチコックとマリオ・バーヴァの引用で地獄の扉を開け、有名映画人を皆殺しにし、自ら決死の石段ダイブを決められるのは篠崎監督だけです。
=山崎圭司(『イタリアン・ホラーの密かな愉しみ』編著者)
◆いつのまにか日本「映画」から消えてしまった「殺しの“顔”」がここにはある。
=柳下毅一郎(特殊翻訳家/映画評論家)
◆ああなんて胸の透く映画でしょうか。渇望していたものがここに満ちていた。脚が、首が、見事に飛んだ。ラストの渇いた疾走、いま思い出しても胸がしめつけられます。さすが篠崎兄!
=大嶺洋子(「真夜中」編集者)
◆「死霊」や「悪魔」だけじゃなくて、「殺し」にもはらわたがある!
たっぷりの血しぶきと監督自らの階段落ちに、ただならぬ本気を感じました。
=伊東美和(『ゾンビ映画大事典』著者)
◆恐ろしく良かった!
表現として描写に問題があるのはわかるが、そこに真っ向から挑んでいる姿勢も映画自体もほとんど快感にちかいかっちょ良さがあった。(「映画秘宝“ベスト2006”」コメントより抜粋)
=清水崇(映画監督)
◆何が正義で何が悪なのか判然としない不安の時代にこのような異形の傑作が生まれたことを心から祝福したい。復讐に燃える藤田陽子の表情は身の毛もよだつほど美しい。
=市山尚三(東京フィルメックス/プログラム・ディレクター)
◆私が今まで観た映像の中で最も衝撃的だったのは、9.11で貿易センタービルに飛行機が激突し、あっと言う間に崩落していくニュース映像だった。『殺しのはらわた』のオープニングのアクションシーンの長回しはそれに匹敵する刺激的な体感映像となるだろう。悪魔が創ったとしか思えないこの邪悪なアクション活劇を体感せずに、新しい時代を迎えるほど日本国民は愚かではないはずだ。絶対体感すべし。
=佐々木浩久(映画監督)
■篠崎誠(しのざき・まこと)
1963年生まれ。95年に『おかえり』で劇場長編デビュー。監督最新作は、WOWOW製作のドラマ『天国のスープ』とドキュメンタリー『映画監督 北野武』。自作のほか、短編オムニバス「刑事まつり」シリーズなどの企画・プロデュースも手掛ける。共著に『黒沢清 恐怖の映画史』。立教大学現代心理学部教授。