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ボブ・ディラン 2001来日ライヴ

現代のフォーキー=伝承者の姿(神話ではなく、、、)    是安 祐

都合で大宮と武道館に行けずにいたら国際フォーラムでの追加情報、急いでチケットを取ったら2日とも一階の真ん中あたりでまずまずの席、ついでに席は悪いが予定が空いていた横浜もゲット。(おかげで映画一本観るのにも苦労する経済危機に陥る)来日初日の大宮公演のすぐ後に朝日新聞の朝刊!に小倉エージのリポ-トが載る。やはり、スゴクいいらしい。もちろん、ネヴァー・エンディング・ツアーが年を追う毎にどんどん良くなっているという驚異的な事実を受けてのこと。しかも今回はギターがバッキー・バクスターからチャーリー・セクストンに変わって初のお目見え。

当日、桜木町の横浜パシフィコへ。首都圏の売れ行きがあまり良くないらしいとの噂があったが下の一階席は埋まっている。この日はひとりの僕は二階のほぼ真ん中、両側は中年夫婦と外国人カップル。開演前ステージにお香のようなスモ-クがたかれる、ウッドベースやペダルスティ-ルが見える。ホームページによると大宮ではたっぷり2時間なんとアンコ-ルで7曲もやったらしい。
 レイドバックに大仰なアナウンスのあとに御大登場。いきなりアコースティックや!なにがなんだかわからない興奮のなか1曲目終了。音がスバラシイ、ウッドベ-スの一音までクリアに聴こえる。ディランの声はきもちエコ-がかかっているが非常に丁寧な歌い方、『Time Out Of Mind』を含めた最近のアルバムから比べてもこんなに声が前に出るとは正直思わなかった!どうも数曲ずつアコースティックとエレクトリックを混ぜていく進行らしい。ゲッ!!『If You See Her,Say Hello』だ!(涙、涙)今回はかなりアンサンブル重視とみた、ギターが変わったせいもあるだろうがディランのギタ-ソロも前回の時の様にひたすら嬉々として弾きまくる感じではなくきちんとコーラス数に従っている。ハ-プは首にぶらさげずに片手に持って吹く、この音色もラフに吹いているのにおそろしく美しい。そうこうしている内に舞台後ろの幕が開き、ドデカいカーテンが出てきてそこに照明があたる。なんとシンプルでカッコイイ美術!!なんとなく向こうの劇場のような雰囲気を醸し出している(『Last Waltz』をちょっと思い出す)。よく見るとバックの衣装がお揃いのスーツだ、旅まわりのハウスバンドのようなイメ-ジか。その後も『Simple Twist Of Fate』、『A Hard Rain's A―Gonna Fall』など予想していなかった曲が次々、ほとんど昇天状態。ありゃりゃ、もうアンコ-ル?、、、って『Love Sick』?スゴイ!!声量もまったく衰えず、なんかアクションも少し激しくなったか? あのネックをきもち下に向ける独特のポ-ズ、左足クネクネも絶好調。『Forever Young』とラストの『Blowin' In The Wind』ではラリーとチャーリーのコーラスがつく粋なアレンジ。
 結局、2時間弱20曲近く、至福の時間なんて言葉じゃ言い表せない。ナツメロ大会や郷愁コンサートとはわけがちがう"現代のフォーク"を聴かせてくれた。歌詞が始まるまですぐに曲名がわかったのはほとんどなかった、それでも首をかしげたくなるようなアレンジも全く無かった。全体的にブルース色が薄れ、まさしくフォ-クロックっぽいアレンジが多かった。好みはあるだろうが歴代で最も洗練されたバンド編成じゃないだろうか。帰りの道すがら、見るからに年季の入ったファンが「今までで一番イイよ、還暦だぜ、還暦!」と話していた。そんなことも忘れていた、だってディラン自身はこのツアーに付けられた『ボブ・ディラン・スプリングツアー』というそっけないタイトルのとおり、ただ"歌い続けていくこと"の一幕としか思っていないのだろうから。

その後の二日間も基本的な印象は同じだった。もちろん、毎日ほぼ半分10曲近くを入れ替え、そのつどハッとするようなアレンジで聴かせてくれたが、"伝説"を観ているような印象ではなかった。(個人的には『Love Minus Zero/No Limit』、『Song To Woody』、『Visions Of Johanna』、『Tryin' To Get To Heaven』などが特に良かった)ごく単純に"素晴らしいバンド"、"素晴らしい歌"だった。こんな風に言うと60年代から聴いてきた人に怒られそうだが、僕はただそのことに感動した。ディラン自身も(近年は特に)明らかに"神話"を拒んでいるようなスタンスでやっていると思う。2枚のトラディショナルアルバムの後、(まさに若いファンのために)新作を書いたことは、今さらながら大きかったと思う。あのアルバムが無ければ、今回の来日にもあれほど多くの若いファンが訪れることもなかっただろう。

三日目のラスト、同じように『Blowin' In The Wind』を演ったあとスタンディングオベーションの中、それに応えているのかいないのかわからない様な、所在なげに立っているディランの姿があった。バックのメンバ-が動いてからそれに従うように舞台から下がっていった。あの姿をそっけないと言う人もいるだろう、手のひとつもあげて欲しい、と。しかし、ディランは世界中のどこでもいつでも同じだろう。自分の歌を聴きに来る人には、その歌で応える。言葉を紡ぎ、歌を歌い続けていくということはそういうことなのだと思う。

最後にごく個人的な心情を書くために、『30周年記念ライブ』アルバムからみうらじゅん氏のことばを引きたい。

 あなたの歌を聴いてボクは育ちました。あなたに出会えて本当に良かったと思って います。
 今夜はどうもありがとうございました。ボクは心の中でそうつぶやいた。